0と1の戯言

【LIFE IS STRANGE感想】過去、現在、そして未来 【ネタバレ注意】

彼女は何度も困難に遭った。あらゆる手を尽くした。しかし結果は変わらない。その努力に意味はあったのか。

 

めんどくさいのであらすじ等はなしです。ネタバレあります

 

僕は生まれてこの方何か特別努力したことがない。行事ごとは斜に構えてまともに参加しなかったし、部活だって「どうせ一番にはなれない」「僕にはできない」そんな言い訳にもならないようなことばかり言って何一つ真面目に取り組んでこなかった。結局、頑張っても結果を残せないことが怖かったんだと思う。そんな僕の思うLIFE IS STRANGE。

 

 

マックスは選択を迫られるたび最良の結果になるよう何度も時を戻す。例えばラッパーポイ男子とスケボーの話になる。スケボーのことなんて何も知らないから微妙な雰囲気になるけど、時を巻き戻せば直前の会話で知ったことをさも元から知っていたかのように振舞うことができる。こんな裏技みたいなことを何度だってできる。その過程でマックスは能力を過信して、万能感を覚えるようになる。でも、進めていくうちにどっちの選択が良かったのか分からなかったり、一時的に巻き戻せなくなってしまったり、戻せる限界を超えた過去の選択が今に影響を与えたりして、少しずつ少しずつ万能感はそがれていく。クロエの父親を助けて現在に戻ってみると、クロエが半身不随になっていた時には気軽に過去を変えることに罪悪感や恐怖を覚える。しかしそれでも尚、マックスはその能力を使うことをやめない。そうやって周りにはいい顔しながら、一度過ぎたはずの過去に執着しながら、都合のいい結果だけを残して物語を進めていく。そんな彼女にのしかかるのが最後の選択だ。クロエをとるか、大勢の人々をとるか、その選択を彼女とコントローラーを握る僕は強いられる。EDからして製作者はクロエを見捨てるほうをトゥルーだと設定している気がする、もちろん僕の推測だけど。でも、そうやって土壇場でズルをせずに選んだ道をマックスが後悔している様子はない。少しだけど僕も同じ思いだ。むしろ巻き戻してとった選択は、巻き戻したからこそ後悔が大きく感じられた。

町のみんなをとったマックスは最初にクロエが死ぬところまで時を戻す。何もせずその場で泣き続けるマックスやクロエの葬式のカットシーンが流れておしまい。この物語はマックスの努力をすべて無に帰して終了する。マックスとの協力を通して人を思いやれるようになったクロエの成長もなかったことになる。父の死と二人の親友が自分の元を去ったせいでグレて利己的になってしまったままクロエのまま死んでしまう。僕がコントローラーを使って彼女たちの物語に介入した十数時間は存在しなかったことになり、この物語は始まったと思ったら終わってしまうのだ。

 

それじゃあ、親友を助けようと頑張ってきたマックスの努力に意味はなかったのか?

 

ところで、僕は高校生の頃サッカーをやっていた。別にうまくはなく、最高学年になってトップチームの試合に出られるようになったのはインハイが終わってからだ。僕とポジションがかぶってた上手い人が辞めたから。僕がインハイで辞めなかったのはその人が辞めたら試合に出られるとわかっていたから。先述したように僕は努力をしない人間だからインハイ前に上手くなれるよう練習するなんてことはなかった。そんな勝ち取り方をしたポジションでも試合は楽しかった。僕みたいなやつがスタメンのチームだ、一回しか勝てなかった。引退が決まって僕が思ったのは「今までの練習無駄だったなあ」だ。今まで本気でやってこなかったくせに。それどころか顧問の「結果ではなく、今まで頑張ってきたことが大切で、その経験が将来役に立つだろう」なんてありきたりな慰めにさえ「勝つためにやってきたんだからその言い草はないだろ」と思っていた。もちろん僕を除いてだけど、顧問の言う通り、彼らの努力は無駄にはならないと思う。僕にはわからないけれど、きっと彼らはこれを糧に一層成長しただろう。僕は成長してないけれど。

 

話を戻そう。彼女の努力は決して無駄ではない。彼ら同様、マックスも重ねた努力とクロエの死を糧に強くなっただろう。消えてしまった十数時間(マックスにとっては数日間)は彼女にとって最も濃い期間だったろうし、少なくとも彼女は時をもどしてまで助けていた親友一人の命と町の数百人?の命を情に引きずられず、客観的に助けるべき方を助けるほどには成長していた。残されたマックスは強くなった。ハッピーとは言えないがグッドエンドだ。

クロエは自身の死をもって、マックスは苦労の末に何もしないことを選ぶことで今を生きる大切さを、巻き戻せない現実における選択の重みを、その選択を後悔せず、悲しいけれど肯定できるほどに物事を真摯に受け止める力を、結果の出ない努力の意味を、この物語は僕らに与えてくれたのだ。

 

そして、それらが悲しみを乗り越えさせ未来を明るくするのだと思う。